開成中算数の新しい試み

2016/5/6

エクタス算数科開成中

入試問題について,受験生の側からではなくて中学校の立場から考えてみましょう。
問題を用意するにあたって重要なことは,その学校が求める生徒像にあう受験生を合格させることです。
問題が簡単すぎたり難しすぎたりすれば差がつきませんし,序盤に難しすぎる問題をいれてしまえば,それをいったん回避するという判断を上手にできた受験生が合格することになります。

そのような観点から興味深いのが,ここ2年間で開成中から出題された問題です。

○2015年大問4
平行四辺形の面積が(底辺)×(高さ)で求められるように,斜めに傾いた角柱の体積は(底面積)×(高さ)で求められます。

○2016年大問1
 x%の下り坂では移動する速さがx%だけ増すことになります。ここで下り坂がx%であるとは,
x=(下向きに移動する長さ)/(横向きに移動する長さ)×100
のことを指します。

どちらの問題も,「公式」が提示されています。
従って,受験生は与えられた公式をもとに論理を組み立てて問題を解くことになります。

以前から開成中は,既存の問題を精緻化させて難問を作るということをしてきました。時計の問題に秒針を持ち込んだのがそのわかりやすい例です。上にあげた2016年の大問1も,坂道の問題に傾き具合による速さの変化を導入しているので,その点では似ていると言うことができます。ところが,これまでに「精緻化」によって作られてきた問題は,概して難しくなりすぎていました。合否を分ける一問にはなりにくかったのです。

上に挙げた2問は,絶対的な難易度という点では「そこまでではない」ものです(あくまでも開成規準でですが)。公式をもとに冷静に論理を組み立てれば,開成中受験者ならば正解することができます。つまり,この2問は,既存の例題の応用問題や発展問題ではなくて,新しい例題なのです。

応用問題や発展問題の発想で作られた入試問題は,ともすると難しすぎて合否に関係がなくなるか,当該単元を徹底的に勉強してきた生徒のみが正解するかのいずれかに陥ってしまいます。開成中は原理に基づく堅牢な論理構築を生徒に求めてきた学

校ですから,それは望ましい事態ではありません。新しい例題という発想は開成中の試みとして,注目に値する大変興味深いものです。

関連記事related posts

エクタス国語科より筑駒開成中

記述問題の捉え方

GWも終わり、2か月もすればもう夏休みです。受験生にとっての「天王山」も目前に迫りました。光陰矢のごとし、などと言われますが、月日の経つのは本当に早いものです。 2024年度の筑駒・開成の国語は相変わらず記述問題がメイン…

エクタス算数科

立方体の展開図

このブログが公開されるのはゴールデンウイークが開けた頃ですが、皆さんは学習のリズムを崩さずに頑張れているでしょうか。いつもは『忙しくて宿題がきちんと全部できない!』なんて言っていたこともあるかもしれませんが、だからといっ…

エクタス算数科

●『アリトメチカ』への書き込み

古代ギリシャにはディオファントスという数学者もいました。『アリトメチカ』という著作が残っています。元来13巻あったのですが現在伝わっているのは6巻のみです。ところで、17世紀初頭にバシェという数学者がそれを注釈つきの対訳…

新着記事latest posts

2025/4/21

お知らせピックアップ

渋谷教育学園幕張中 学校説明会 5/30開催!

Z会主催 エクタス協賛渋谷教育学園幕張中学校 学校説明会のご案内【参加無料】 5/30(金)に渋谷教育学園幕張中学校の学校説明会を開催いたします。同校は自調自考をモットーに生徒の成長を促し、海外大学も含め全国でも屈指の進…

お知らせピックアップ

2025/4/10

エクタス国語科より

『記述問題は後ろから考えよう』

学校でも新学年を迎え、入学式・始業式と行事が多かったことと思います。学校生活がようやく落ち着いたころにはすぐGW…でも、受験生にとっては「遊ぶ期間」ではなく「勉強漬けになる期間」かもしれませんね。 今年の開成中学の国語は…

エクタス国語科より

2025/4/9

お知らせピックアップ

小6「筑駒・御三家・駒東 最難関スーパー講座」【2025年度前期】申込受付中!

講座は土曜日午前を中心に設定、1科目から受講が可能です。受講生には担当講師のナビゲートにより個別カリキュラムを提案。 毎年筑駒・御三家・駒東中合格者を輩出するエクタスの看板講座。最難関校の入試傾向に直結する教科別講座を今…

お知らせピックアップ

pagetop