2020 御三家の哲学③

2020/7/20

エクタス国語科より武蔵中

武蔵中の出題から。

母を亡くした中学二年生の少年。父・妹とともに、九州の母の実家に転居。
大事な家族を失って、妹ともども、茫然自失。
かつて、読書は好きだった。でも、母も好きだった本は、母を連想させるので、手に取れない。
そんなとき、同じ歳くらいの見知らぬ少女から、たまたま本屋である本をすすめられ、読書の楽しみを思い出す。また、なんとなくなつかしい感じのする少女との出会いに、胸をときめかせる。
さらに、少女から教えられた本を、転校先のクラスのリーダー格の少年にすすめたことをきっかけに、クラスメンバーとの距離も縮まったようだ。球技大会のバレーでしくじっても、皆、励まし、支え、守ってくれるではないか!
ようやく、少しずつ、前を向いて歩けるようになってきたかな…
(宮下奈都の文章より)

私たちは、さまざまな「きっかけ」や「縁」「転機」に支えられて生きていますね。この少年も、まず、母の死を前に、悲痛な思いに沈みました。しかし、不思議な少女との邂逅や本との遭遇、また、転校先のクラスメイトとの出会いによって多くの可能性を得、失望と葛藤の淵から少しずつ立ちあがれたようです。

他方、もし、この少年の絶望が、助縁となった少女や本・クラスメイト等への興味を押さえ込むほどに大きかった場合、少年は、閉じた世界への沈溺を余儀なくされたまま、社会への窓を閉ざさねばならないのでしょうか?また、いかなる「縁」に行き当たるかは、偶然の産物と片付けてよいでしょうか?

ここには、“身辺の「縁」を、自身の運命を前向きに切り拓く方向に転換すべきは、個人の意志力一つである”…といった単純な精神論・自己責任論では割り切れない、何かがあるようです。答えは、容易ではありません。

しかし、まず、真正面から向き合うことはできる。自身を取り巻く現実と四つに組み、もがき続けることはできる。その果てに、もしかしたら、希望の燭光が見えてくるかもしれない。…作中の少年も、その果てに元気になれたのかもしれない。こんな、凡人なみの知恵の大切さに気づかせてくれた、本年度の武蔵中の出題でした。

関連記事related posts

エクタス国語科より

「外(と)にも出よ触るるばかりに春の月」

こんにちは。大宮校の佐藤です。 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、各地の自治体が不要不急の外出自粛などを呼びかけています。エクタスの授業は4月中お休みになり、みなさまは各学年の課題を自宅で励まれていることと思います。…

エクタスニュースエクタス国語科より

いつもと違う夏休み

「いよいよ夏休みになりました」と例年なら言っている時期ですが、今年はコロナの影響で「まだ1学期が終わってません」という人もかなりいることでしょう。そんな状態であっても中学入試は待ってくれません。いずれにせよ、夏本番を迎え…

エクタス国語科より筑駒開成中

『読んでもらう』意識を持とう

GWも終わり、2か月もすればもう夏休みです。受験生にとっての「天王山」も目前に迫りました。光陰矢のごとし、などと言われますが、月日の経つのは本当に早いものです。 筑駒は4年連続で漢字以外の国語の出題は全問記述が続いていま…

新着記事latest posts

2024/4/25

お知らせピックアップ

【小1~3】試行(思考)力・記述力 診断テスト 申込受付中

低学年の現段階で求められる力を診断 筑駒・御三家・駒東中を目指す上で必要となる、与えられた未知の課題を試行錯誤して正解を導き出す「試行力」、考えた答えを書き言葉で表現するための「記述力」。最難関中学受験専門塾だから可能な…

お知らせピックアップ

2024/4/18

エクタス理科より

身近な太陽

2024年4月9日に皆既日食が観測されました。 といっても、日本ではなく北米(メキシコ、アメリカ、カナダ。現地時間で言うと8日午後)でのできごとです。 皆既日食は頻繁に起こるものではなく、かつ時間も短いので、いろいろな分…

エクタス理科より

2024/4/4

エクタス算数科

覚えておくと便利な暦

暦の問題を苦手にしている生徒は意外と多い気がします。日付と曜日を答える問題などはその基本中の基本ですから、しっかり正解しておきたいですね。 【問題】 今年の4月4日は木曜日です。では今年の12月25日は何曜日ですか。 【…

エクタス算数科

pagetop