北京オリンピックでの、カーリング女子日本代表の活躍が話題となっています。
決勝で敗れたのは悔しかったですが、銀メダルという素晴らしい成績でした。
カーリングは、氷上のストーンと呼ばれる石が「カール=曲がる」ことに由来する名前の競技で、氷の状態を読んで適切な場所にストーンを運び、得点していきます。
ストーンを滑らせて投げると、摩擦が少ない氷上とはいえ、その速さは徐々に遅くなります。
ストーンが速いうちは曲がらずにまっすぐ進みますが、遅くなってくると少しずつ曲がり始めます。
滑らせたストーンが想定した速さより遅くなってしまい、狙いより前の段階で曲がり始めてしまった場合は、「スイープ(氷の表面を専用のブラシで掃くこと)」をします。
氷面をとかしてストーンの速さの低下を抑え、よりまっすぐに進む距離を伸ばすのです。
ところが、連日行われる試合の放送を見ていて、「曲げたい方向にスイープしています」と実況されている場面も多くありました。
通常はストーンをはさむ2人が同時にスイープするのですが、このときはカーブの外側になる人だけがスイープしていました。
そうすると、ストーンの速さが速いときでも確かにストーンが少し曲がっているように見えます。
なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
この疑問を考えてみると、「光の屈折」と同じ仕組みだということに気づくかもしれません。
光の屈折は、光がちがう物質の空間を進もうとするとき、光が曲がってしまう現象です。
例えば、空気から水に進む光について考えてみましょう。
空気が上側、水が下側にある空間で、空気中を左上から右下に進んできた光は、水面から遠ざかる方向に少し曲がります。
言い換えると、左上から右下に進む光は、水面で時計回りに少し回転して進んだということになります。
光は、空気中と水中で進む速さが異なります。空気中の方が速く、水中の方が遅いのです。
このため、光の屈折が起こります。
それでは、先ほどのカーリングの話と比べてみてください。
スイープをすることで、氷上の「スイープした部分」は「スイープしていない部分」より、ストーンが速く進みます。
これを上の光の屈折の例に当てはめると、「スイープをした氷上=空気中」「スイープをしてない氷上=水中」となります。
つまり、カーブの外側になる人だけがスイープすることにより、「ストーンが進む速さの差」が生まれ、「スイープしていない方にストーンが曲がっていく」というしくみなのです。(氷についてはいまだ解明されていないことも多いため、違う説を唱える人もいるようです。)
このように、身の回りにも理科がかくれており、理科の原理原則をしっかり学んでいると、いろいろなことに「なぜ?」と感じることができます。
偉大な科学者のほとんどは、「なぜ?」という疑問から考えを深め、新しいことを発見しています。
みなさんもいろいろな疑問を探し、じっくり考えてみると面白いかもしれません。