2023年の入試が終り、新6年生のみなさんは2024年入試の受験生としての一年間がスタートしましたね。少しずつあたたかくなり、春を感じるようになってきています。
さて、今年の桜蔭のⅡではセミの産卵による光ファイバーケーブルの断線被害に関する問題が出題されました。東日本と西日本でのセミの種類と分布を比較し、断線の原因となったセミを特定する問題です。
2005年頃からクマゼミの雌は太い産卵管をもつので、本来産卵する樹の幹と似ている光ファーバーケーブルに産卵をしてしまい、結果的に断線して通信障害が起きてしまうということが西日本を中心に起こりました。対策として、光ファイバーを覆う被覆材をより堅いものへと変更しました。また、生木には産卵しないというクマゼミの習性を活かし、被覆材を生木に近いような材質でつくるようにしました。結果的に産卵による断線被害は激減しました。
セミは幼虫の長い間を土の中で過ごし、成虫になると地上に出て飛び回りますが、交尾、産卵を経て長くても一ヶ月程で寿命を迎えます。どのくらいの間土の中で幼虫として過ごすかはセミの種類によって異なります。
セミの仲間には、ある決まった周期毎に大量発生をするものがいます。成虫が大量に発生する周期が正確に決まっており、それ以外の期間には全く成虫が見られません。日本には生息しておらず、北アメリカの東部にのみ生息しています。この地域の北部には17年の周期ゼミが3種、13年の周期ゼミが4種生息しており、これらのセミは同じ地域にはほとんど生息していません。
なぜこのように17年や13年周期で成虫が大量発生するのでしょうか。個体の生存に有利なためというのが有力な説です。
個体の生存に有利ということを具体的に書くと、周期ゼミの捕食者や寄生虫の発生を抑えることで生存の可能性を高くしているということです。捕食者の多くは昆虫やは虫類、鳥類、ほ乳類などで、これらは毎年のように発生をしています。17年や13年おきにセミの成虫が発生することでこれら捕食者に毎年大量に食べられることを防ぐことができます。(もちろん捕食者は他のものも食べていますが、セミが毎年発生し、セミをたくさん捕食することで翌年に大量に発生し続けることを抑えることができます。)寄生虫の中にはセミと同じように数年おきに発生するものが多くいますので、17年や13年おきでも大量に寄生されてしまうのでは?と思いますが、これも17年や13年という素数であることで大量の寄生を防いでいます。例えば、周期ゼミの大量発生が17年や13年ではなく、16年や12年だとどうなるでしょうか。2年おき、3年おき、4年おきといった約数年おきに大量発生した寄生虫により、周期ゼミが大量発生した年は毎年大量に寄生されてしまいます。しかし、周期ゼミの大量発生が17年や13年といった素数であれば(ここでは17年の周期ゼミと比べてみましょう)、2年おきに大量発生する寄生虫であれば34年に1回、3年おきに大量発生する寄生虫であれば51年に1回、4年ごとに大量発生する寄生虫であれば68年に1回しか大量に寄生されることにならず、大量に寄生される機会が極端に少なくなります。周期が長いだけではなく素数であることも個体の生存に有利であると言えます。
新6年生のみなさん、一年後にはみなさんが進学する中学が決まっています。
悔いの無いよう、充実した受験生活を送って下さい。
頑張れ!受験生!