コーンフレークから生産者さんの顔が浮かぶか?

2021/2/8

エクタス社会女子学院桜蔭中筑駒開成中雙葉中麻布中

2021年度の中学入試もほぼ終盤を迎え、あと一部の合格発表を残すだけとなっています。今年の生徒は、例年とは異なり、非常に多くの制約がある中での受験対策となりました。長い期間にわたる学校や塾の休講、オンライン学習への対応、その多くが中止や延期となった学校説明会や文化祭、当然のように求められる外出の自粛やさまざまな感染防止策など、これだけ大変な状況の中で入試を迎える受験生は、私たちの長い指導経験の中でも初めてでした。それだけに、この春の入試で合格を勝ち取った皆さん、本当におめでとうございます。この受験勉強で培った力は、これからの皆さんの人生でもきっと役立つことでしょう。

さて、今年の最難関校の社会科の入試問題に目を通してみると、「食べること」に関する出題が非常に目立ちました。この現象の根底には何があるのか、ふだんの生活や学習ではどんなことに気をつけると良いのか、などを少し考えてみようと思います。

現代の日本では、多くの人が衣・食・住に不自由することなく暮らしています。食べたいものをいつでも、どこでも選んで食べることができる豊かな社会になっています。そして、こうした便利な世の中だからこそ、多くの人が「食べることの大切さ」を忘れてしまいがちです。しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、学校で給食を食べる機会が減ったり、家庭ではテイクアウトやデリバリーの利用が増えたりと、皆さんの「食事」にもさまざまな変化が生まれる中で、改めて「食べること」に関心が向けられた一年だったといえます。

こうした背景から、今年の入試問題では「食べること」に関連したさまざまな出題が見られたわけです。

①「食材」に対する興味・関心
ところてん・そうめんの原料(女子学院)、米を利用した発酵食品(麻布)、油やしから作る食用油(開成)など

②「食」の歴史
昔からウシを食べていたのか(筑駒)、馬肉や鹿肉を「さくら」「もみじ」と呼んだ理由(麻布)、明治以降の食の変化(女子学院)

③「食べること」の意義
子ども食堂の目的・学校給食の問題点(麻布)、学校給食の歴史・食育基本法の理念(女子学院)

④食料自給
フードマイレージ(雙葉)、食料の輸入相手国(桜蔭)、食料供給の安定(女子学院)

⑤生産・流通への意識
地産地消(桜蔭)、グリーン・ツーリズム(開成・桜蔭)、卸売市場(麻布)、都市農業の役割(女子学院)

⑥伝統的な食文化への関心
伝統的な郷土料理とご当地グルメの違い・和食を無形文化遺産に登録したねらい(麻布)

2020年7月に農林水産省が発表した資料「我が国の食生活の現状と食育の推進について」の中から、いくつかの興味深い調査結果をあげます。

①朝食を欠食する子どもの割合…4.6%
小学校6年生を対象とした「朝食を毎日食べていますか」という質問に、「毎日食べている」と答えた生徒が86.7%、「どちらかといえば毎日食べている」が8.6%、「あまり食べていない」が3.6%、「まったく食べていない」が1.0%でした(文部科学省「全国学力・学習状況調査」)。
②主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上ほぼ毎日食べている国民の割合…56.1%
「ほぼ毎日」と答えた人が56.1%、「週に4~5日」が19.4%、「週に2~3日」が17.4%、「ほとんどない」が6.6%となっています(農林水産省「食育に関する意識調査」)。
③農林漁業体験を経験した国民(世帯)の割合…39.3%
「本人または家族の中に、農林漁業体験に参加した人はいますか」という質問に対する答えです(農林水産省「食生活及び農林漁業体験に関する調査」)。
④地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民の割合…47.9%
ここでいう「伝統的」とは、郷土料理や伝統料理など地域や家庭で受け継がれてきた料理や味、箸づかいなどの食べ方・作法のことです(農林水産省「食育に関する意識調査」)。

「ごはんを食べる」ということは、単に栄養を摂取するというだけではありません。「いただきます」「ごちそうさま」と言って食べ物に感謝の気持ちを表すこと、家族や友だちと一緒に食卓を囲むことで会話が生まれ、食事のマナーやコミュニケーションの力が育まれることなど、食事の場にはこうした意味もあります。(マスク会食とは、こうした共食の機会にも制約がかかるということでもあります)。
また、ふだん食べているものが「どこで生産されているのか」、「どうやって加工されているのか」、「どのようにして食卓まで届くのか」と考え、生産・流通・加工といったさまざまな仕事とのつながりを意識することも大切です。

食事の最初と最後に「いただきます」「ごちそうさま」と言っていますか?
家族と一緒に食事をするとき、その準備や後片付けを手伝っていますか?
自分が好きな料理(あるいは嫌いな料理)がどうやって作られるのか、知っていますか?
学校から配られる給食の献立表に目を通していますか?

さすがに、コーンフレークから生産者さんの顔を浮かべる必要はないのですが、どんな食べ物にも「それを作った人がいること」を忘れず「いただきます」と言って食べ始めることの意味を、もう一度考えてみてはどうでしょうか。

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