今年(2023年)6月2日、「東海道新幹線(東京~名古屋間)が、終日運休」というニュースがありました。皆さん覚えていますか?
これは、次々に発生する積乱雲が同じ場所を通過することによる大雨(線状降水帯)の影響で、このときの線状降水帯は、九州の南にあった台風2号の影響で発生したということです。
ちなみに、「線状降水帯」という言葉を書かせる問題は、たとえば2021年度の開成中で出されています。
この週のエクタス小4理科の授業は、ちょうど「天気」についての学習でしたので、前述のニュースを使い「台風にふきこむ風」について指導しました。今回は、その授業の内容を少しだけご紹介します。皆さんも小学4年生になったつもりで、考えてみてください。
まずは、【小4にとって新しい概念】の説明から始めます。
①雲は、水蒸気を含む空気が上空で冷やされて、水や氷になったもの。
②日本では梅雨という時期があり、この時期は北からの冷たく湿った風と南からの暖かく湿った風がぶつかり、暖かく湿った空気が上空に行って冷やされ雲ができ、長期間くもりや雨の日が続く。この雲の帯ができる部分を梅雨前線という。
③台風は熱帯の海上でできる熱帯低気圧のなかまで、暖かく湿った空気が多くある。
それでは次に、「台風にふきこむ風」について考えてみましょう。

【図1】は、6月2日12時の日本列島と梅雨前線および台風2号の位置関係を表しています。(必要ないものは省略してあります。)
ここで問題です。台風にふきこむ風の「向き」は、時計回りと反時計回りの、どちらになるでしょうか?
上記①~③の説明と【図1】をあわせて考えれば、前もって知識として知らなくても、正解にたどり着けるはずです。

エクタスの理科の授業では、新しい概念の説明は行うものの、用語の丸暗記などはほとんど要求せず、思考力や処理力を向上させるべく指導を行っています。
それでは解答です。【図2】をご覧ください。
「東京から名古屋で線状降水帯ができた」ということは、積乱雲が次々とできたことになるので、梅雨前線に暖かく湿った空気がより多く入ってきたことになります。
さらに、「台風は熱帯低気圧のなかまで、暖かく湿った空気が多くある」ということは、台風から梅雨前線に向かって風がふいたことになります。【図2】より台風は九州の南にありますから、台風を中心に反時計回りに風がふいたことになります。
このように、「台風は反時計回りに風がふきこむ」という知識を一方的に教えるのではなく、一手間かけた説明をすることで、生徒の理解度も変わってくると考えています。また、理科的な思考力をきたえることもできるので、担当目線で言うと一石二鳥です。
難関中学の入試では思考力が試される問題が多く出題されます。これは、知識問題を出題しても差がつかないという背景もあってのことです。思考力は短期間に向上するものではないので、毎週1回の授業においてコツコツ養っていくことが、最短かつ最も効果が高い方法でしょう。また、日ごろから「自分で考えてみる」意識を大切にしてください。