少し前にプランクトンのミクロな戦いを高解像度カメラがとらえた,というニュースがありました。皆さんは,プランクトンと呼ばれる小さな生物のことを知っていますか?小5より上の学年の人達ならわかると思いますが,水中にただよっているとても小さな生物のことです。大きなものでも1mmあるかないかぐらいの生物です。プランクトンはとてもたくさんの種類があるので,ぜひ一度調べてみてください。おもしろい形をしたものがたくさん見つかると思います。
さて,そのプランクトンの中に渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)という細胞が1つの生物がいます。まるで装甲を身にまとって走り回る戦車か宇宙船のように見える生物です。さきほどプランクトンにはたくさんの種類があります,と書きましたが,渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)だけを調べてもとてもたくさんの種類が発見されています。そして,その中にとても攻撃的な2種類の渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)がいることが知られていますが,その攻撃的な渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)が相手を攻撃する様子を高解像度カメラで撮影することに成功した,というニュースでした。
できれば実際に動画をみて欲しいのですが,どのように相手を攻撃するか少し説明をしましょう。1つがポリクリコス属というグループの渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)で,刺胞(しほう)というカプセルが体にあります。他の渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)を見つけると,針を発射して相手の装甲につきさします。その針にはひものようなものがついていて,相手を自分の方へ引き寄せて十分に近くにきたら,そのまま丸のみして栄養にしてしまいます。もう1つのグループがネマトディニウム属といいます。こちらはもっと強力で11~15個の刺胞(しほう)が輪のように並んでいて,同時に針を発射することができるそうです。つまり,渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)は本当に相手を食べたければ,ここまで武器をそろえて戦いを繰り広げる必要があるということです。
ある動物学者がこのように言っています,「生物についてどんな法則を思いついても,渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)については例外が見つかるのです」と。つまりこれからももっと強力な武器をもった渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)や,さらにかたい装甲をもった渦鞭毛虫(うずべんもうちゅう)が次々と発見されることでしょう。
生物の研究の楽しさの1つがこの「多様性」です。皆さんもこれからさまざまなことを学んでいきますが,次々に新しいものが登場する方が楽しいと感じられる感性を育ててください。「知っている」ことを誇るよりも,「知らない」ものを見つけて嬉しいと感じられる人の方が,勉強でも仕事でもとても多くのものを得ることができます。きっと受験勉強の中にも「知らない」ものがたくさん見つかるはずです。その仕組みや理由を考えて,大いに楽しんでください。