大問1「化学:物質の性質」
開成の化学 今回のテーマは1つの物質にこだわっての実験。A君、B君C君の三人が炭酸カルシウムを中心とした実験、考察を次々と行い、試行錯誤していく形式のものです。三人の疑問、三人の実験の内容をきちんと理解し、問うていることに対して解答をしていくあまり難易度の高いものではありません。ただし、行っている実験自体はめずらしいものです。
炭酸カルシウムの加熱分解 ⇒ 酸化カルシウムと水との反応による発熱
⇒ 水酸化カルシウムの溶解度
と高校入試では定番の化学変化でしたが、中学受験生には戸惑う生徒もいたのでは無いでしょうか。ただ、開成の問題の素晴らしいところは、とまどう生徒にも判断手段、材料をあたえていることなのです。持てる知識をぶつければ戦うことができるように作問されています。問題文にある「はじめにたまった」「途中からは管の口まで気体がきているのに、それ以上たまらない」などの文章の持つ大きな意味に気づくとができるかどうかも得失点に大きく影響したのでは無いでしょうか。とここまで書きながらも、やはりこの問題は満点を取っていかなければいけないものだったと考えます。
大問2「生物:昆虫」
開成の生物 今回のテーマは、オオヒラタシデムシを主題材とした「こん虫」の知識問題中心のものでした。問題文中に「こん虫」ということばが出てきますので、細かいことにとらわれずに、この生物は自分の知っているカブトムシやモンシロチョウと同じ体のつくり、体の変化をする「こん虫」の仲間であり、ただはじめての「こん虫」だと考えて解いていきます。問2は開成の過去にもたびたび出てくる胸の位置と足の関係のものです。このような「こん虫」についての知識を問うものは、観察することを大切にしているこの中学ではたびたび出題されていますから、開成志望者は過去問で研究済みのことでしょう。ここには失点する部分はありません。
大問3「物理:さおばかり」
開成の物理 今回のテーマは、さおはかりのつりあいを利用した計算問題です。実はこの問題にそっくりな問題が昭和57年に出題されています。そのときのものまで対策している受験塾も多数あると思われますので、この問題もかなりの生徒が高得点をたたき出したのでは無いでしょうか。強いて気をつける問題を選ぶのであれば問4でしょうか。おもりが左に来ると言うことに不自然さを感じ、解答に困った生徒もいたのではないでしょうか。ただし、麻布の過去の問題に支点の左側につり合いがある問題もありましたから、開成受験者としては対策済みではないでしょうか。ただ、気持ちよく数値が出せず、四捨五入の問題にすっきりしない気持ちが残ったのではないでしょうか。ただ、どれも確実に解ききるべき問題であったと感じます。
大問4「地学:気象」
開成の地学 今回のテーマは天気。直近1~2年間に起こった現象、出来事(理科的な時事問題)がテーマとして取り上げられることが多く見られます。特に、その年に観測された天体ショーや自然災害(噴火、台風、地震)などです。天気図の読み取りはとても基本的なものまた、観天望気についてのものも過去に「夕焼けが見えたら晴れる」という出題がありました。〈 ヒマワリの種子をまいたころの気象衛星ひまわりからの雲の映像 〉なんてしゃれた問題を出題されたのはきっと地学のあの先生なんだろうなと、僕らはほほえんでしまいますが。受験生はその素敵なしゃれっけには気づく事無く、しっかりと問題を解ききって欲しいなとも感じました。選択肢の中には迷うことも無く、やはりここも取り切らなければ合格はない問題となっていました。
近年の開成入試の理科はすべて取り切らなければいけない、失点できないものとなっています。難易度は決して低いわけでは無いが、それだけの生徒が集まり、受験が行われる開成中学において1問の失点は命取りとなり得る。
計算問題について、
解いたことの無い問題が無いというぐらいに練習しきっておく。
「全部解くことができて当たり前である」というぐらい、過去問にあるあらゆる計算問題を仕上げ、同レベル相当の学校の出題した計算問題にもさらに手を出し、自分を磨いていくことが必要である。ただ、いたずらに計算が複雑なものは近年出題されていないことも忘れないで欲しい。
知識問題について、
開成中には未だ「カラー写真による出題が無い」のだから、テキストや図鑑をカラーで見るのでは無く白黒でとらえたほうが効果的。または線だけで書かれた図を見る方がよい。毎年、しっかりと観察し描かれた図が出題されるのだから、「見たことがあるのに観たことが無い」は命取りになる。一対一の知識は当然完璧に、それ以上にそれぞれを仲間分け、分類するくくりができる知識の定着も深めて欲しい。
時事問題について、
特に地学の分野ではその年に起きた事がらを出題してきます。ただ、それらの現象を知っているだけでは太刀打ちできない。たとえば、日食や月食の知識を知っていても、それは昭和63年に出題された過去問が解ける力に足りるだけ。進化し続ける開成の問題は、近年では、「金星の日面通過」のときの金星の移動の位置についての作図など、素晴らしい出題があります。このことからも時事問題は知っているだけでは話になりません。そこから派生する仕組み、原因、変化などもあせて、理解していくことが必要です。
実験観察問題について
実験器具の使い方についてはすべての器具について理解しておくべきです。また、その使い方は当然ですが、実験の失敗についても、どのようにすればよいのかまでを理解しておく必要があるのが開成の入試問題です。今年も「もし~なら~になるはず」と試行させる問題がありました。「こうしたらどうなる」「なぜそのように使う」というように常に考えながら理解していく必要があります。
これらのことからもおわかりになるでしょう。開成中学の理科の入試問題は、もれの無い学習を確実に積み上げてきた生徒達が、入試当日の一瞬にすべてをぶつけ、持てる力を爆発させ、1問、1問得点をつみ重ね、その結果たたき出した得点を勝負するものなのです。しかしそれはただいたずらに難しいのでは無く、すべての受験生の努力をも得点として認めてくれる素晴らしい入試問題でもあります。
これからの受験生たちへ。先輩達に遅れること無く、開成中学合格のためにやれるだけをやりつくし、すべての努力を惜しまず、前へ前へ進め。もっともっと、もっともっと鋭い自分に、研ぎ澄ませた自分となれ!!!