歴史とは、純粋に客観的なものでなく、いま現在の視点から過去について語られるものであることを説明した大問1(成田龍一『戦後日本史の考え方・学び方』)。弟をからかい、突き放すそぶりをしながら、彼の身の安全を案じて配慮する兄と、意地をはりつつ兄を慕う弟…両者のほほえましい関係性を描いた大問2(長野まゆみ『改造版 少年アリス』)。「上着」…しばらく「ぼく」と離れ、ハンガーに身を合わせなければならず寂しくなるが、再び「ぼく」に着てもらえて安堵し機嫌を直す(詩 アーサー・ビナード『なれ』)。以上3つの大問で構成されています。
本文は、大問1・2ともに、B4・1枚程度の分量で、短めです。
また、当校の記述は、いずれも、数十字以内でポイントを絞り込み、簡潔かつ端的にま
とめる技量が必要です。
これらの体裁は、例年と変わりがありません。
大問1~要点・要旨を問う選択式2題(選択肢5つ)。要点の記述1題。表現の意味説明1題。問2にて「自分の考え」を要求されたり、問3にて「過去を…冷凍保存」の意味を問われたりしていますが、”過去は現在の視点からしか語りえない”という要旨を踏まえれば、解答の方向性を特定できます。
大問2~表現(擬人法)の意味説明1題。心情の記述2題。心情を問う選択式1題(選択肢5つ)。漢字5題。うわべの意地の張り合いの底流に見出された兄弟愛を読解できれば、大きく逸脱することはありません。
大問3~心情を中心とする記述4題。「上着」が、ハンガーにかけられている間に自分以外のものと関わっている「ぼく」の周辺に嫉妬しているであろう点にまで着想できた受験生は、大幅にリードできたといえそうです。ハンガーと「ぼく」の間を身移りする「上着」の違和感…までの読解では、弱いかもしれません。
このように、筑駒中の基本的な出題コンセプトは本年も健在であり、例年に比べて、より一層シンプルになった印象があります。短時間で速読し、しばし熟考した上で、要旨・心情の核心部分に思い至り、記す訓練を積まねばなりません。本文中の言葉を切り貼りして、懸命に長く書いても評価されないことを、肝に銘じておくべきです。
次年度以降の受験生のみなさんは、心して臨んでください。