Ⅰ 歴史(各時代の輸送・交通をテーマにした出題)
Ⅱ 地理(さいたま市の変遷をテーマにした出題)
Ⅲ 公民(グローバル化をテーマにした国際関係中心の出題)
基本事項の正確な理解と定着が問われる出題が中心で,例年よりは少し難しい印象です。特にⅡは,埼玉県やさいたま市に関する出題が多く,地元の受験生に有利に働いたとしてもおかしくありません。
Ⅰでは,選択問題でどれだけ失点を避けることができたかが勝負の分かれ目となりそうです。問1の律令制度についての正確な理解が問われる問題や,問11のシベリア出兵とはどのような出来事なのか把握できているか問う問題など,単純な語句や年号の暗記だけでなく,一つ一つを正確に学習し,周辺知識との関連づけの中で理解できているか,チェックしておきましょう。
Ⅱは,埼玉県やさいたま市をテーマにした出題で,例年の問題と比べて少し難度が上がっています。さいたま市内の小3・4が使う社会科副読本『わたしたちのさいたま市』に出て来る「井沢弥惣兵衛と見沼の開発」の章をもとにした出題と思われ,問1の地形図に関する問題や問9のさいたま市を塗り分ける問題などは,この副読本を使った学習の経験があれば有利だったと思われます。そのほか,問5の川口市に関する出題や問8の政令指定都市の人口を比較する問題も,埼玉県やさいたま市についての学習の習熟度を問う意図が感じられます(問5の残りの選択肢では,深谷市やさいたま市岩槻区についての説明や,川口市と戸田市・蕨市との広域合併が破談になったことにもふれています)。一方,問6では昨年100周年を迎えたパナマ運河の位置が問われており,基本的な世界地理の学習も求められています。
Ⅲでは,国際連合やEU,TPPなど国際社会に関した出題が中心となっています。問5(日本国籍のない外国人の子女が公立学校に通える点)や問8(レファレンダムの一種である地方特別法についての住民投票)は,難問の部類に入りますが,それ以外の問題で選択肢を慎重に吟味して正解を導きだすことができたかどうか,一つ一つ確認が必要でしょう。
ちなみにⅢの問8で問われた,憲法95条に基づく住民投票(一の地方公共団体にのみ適用される特別法の制定における住民投票)は,今後の入試において注意が必要かもしれません。国政において直接民主的な手続きが憲法上明らかに認められるのは,①憲法改正の国民投票,②最高裁判所裁判官の国民審査,そして③地方自治特別法についての住民投票の3つだけです。昨年は,集団的自衛権の解釈変更についての閣議決定や国民投票法の改正などの動きがあったためか,栄東中A入試でも同様の出題が見られます。憲法95条に基づいて実際に住民投票が行われたのは戦後間もない時期に集中しており,この60年間はまったく機能していなかったのですが(そのため中学入試でもほとんど出題されていません),ここに来て出題が続いているため,最難関を目指す受験生は要チェックと言えます。