特殊算をどうとらえるか~2015年武蔵入試大問2について~
受験算数においては○○算という単元がたくさんあります。一番有名なのはつるかめ算でしょうが,そのほかにも消去算・和差算・分配算・還元算・差集め算・過不足算・・・ときりがありません。それぞれに解き方が異なるので,これらは別の単元のように見えています。けれども,実際にいろいろと作問をしているとよくわかることですが,問題の条件を2,3変更するだけである単元の問題が別の単元の問題になるということはよくあることなのです。
ここで,2015年の武蔵の入試問題について見てみましょう。
「あめとチョコレートが同じ個数ずつあります。ある日,クラスの生徒にあめを配りました。あめを全員に12個ずつ配るには71個足りないので,男子に9個ずつ,女子に11個ずつ配ったところ,6個余りました。また,男子は女子より7人多いそうです。(1)クラスの生徒の人数は何人ですか。(2)次の日,チョコレートを配ろうとしたら,欠席した生徒が4人いました。何人かの生徒には8個ずつ配り,残りの生徒に10個ずつ配ったところ,55個余りました。チョコレートを8個もらった生徒の人数は何人ですか。考えられる場合をすべて求めなさい。」
単元においては過不足算に属するということになります。そのため,いろいろと工夫を重ねれば線分図や面積図で解くことも可能です。ではあるのですが,武蔵中はなぜこの問題を出題したのか,その背景を考えてみましょう。
伝統的に,武蔵中で特徴のある出題といえば「調べ上げ」です。たとえばつるかめ算において全体の個数等を特定しないと答えは複数あることになりますが,そのように答えが一つに決まらない状況下で問題条件にあうものを調べていくタイプの問題がしばしば出題されてきました。概してつるかめ算や損得算のタイプの問題が多いのですが,今回の過不足算についてもそのような出題の一つととらえることができます。ただし,ここが重要なところなのですが,武蔵中は○○算から解の一意性のための条件を引き算することで作問をしているのではないはずなのです。すでにある諸々の特殊算から類似した手法で条件を減らしているのではなく,これらの特殊算が成り立つおおもとのところから問題を考えているのでしょう。
実のところ,つるかめ算・損得算・過不足算を含む和差の特殊算の多くは,表による調べ上げという「原始的」な方法で解くことができます。ですから,共通の基盤として表によるとらえ方というものがあるのです。そこにいろいろな条件を加えていくことで,もっと手軽で便利な解法を使えるようになり,○○算という特殊算になるのです。
エクタスの算数教材をご存知の方は「あっ」と思われるかもしれません。というのも,エクタスの算数においては,つるかめ算よりも過不足算よりも先に表による調べ上げの授業が先にあるからです。その授業では,多くの特殊算を答えが一つに決まるものも決まらないものも含めて共通の根本において扱います。便利な特殊解法よりも根本となる考え方を重視するというのは,ジュニアから受験学年まで変わることのないエクタスの根本姿勢なのです。
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