2023年桜蔭中 国語の入試問題を紹介します。

2023/6/2

エクタス国語科より桜蔭中

試験時間50分 満点100点
随筆文 5問 物語文5問
解答形式 字数制限なし

大問1随筆文 出典は高橋源一郎『高橋源一郎の飛ぶ教室-はじまりのことば』(2022年11月初版)から。筆者が出演しているラジオ番組の冒頭部分をまとめた随筆文です。

2020年6月5日 「新型コロナウイルス」の流行以降、世界中で読まれている本、カミュの『ペスト』の登場人物の言葉を思い出します。「誰でもめいめい自分のうちにペストをもっている。りっぱな人間、つまりほとんど誰にも病菌を感染させない人間とは、できるだけ気をゆるめない人間のことだ。そのためには意志と緊張をもって、決して気をゆるめないようにしていなければならない。」

2020年12月11日 パンクロックバンド、優れた俳優で知られる峯田和伸さんのインタビューが話題になりました。峯田さんはツイッターやSNSで、人々が、みんなひとつの方向に流れ出そうとしていることが怖いといいました。武道館での講演のタイトル「世界がひとつになりませんように」はいいことばだと思いました。

2022年2月25日 入ってくるニュースは、どれも戦争に関係したことばかり。あらゆるところでいろんな意見が出ています。筆者は「見る前に跳べ」ということばも好きですが、「犀(さい)のようにただひとり歩む」ことを忘れたくないとも、強く思っています。

問2 カミュのことばは自信たっぷりではなく、とまどいながら自分自身を疑いながら、怯えながら書かれています。何にとまどい、何に怯(おび)えているのか簡潔に答えます。

問3 峯田さんはなぜ、世界がつながってひとつになることを望まないのか説明します。

問5 カミュ・峯田和伸という表現者のどのような点に希望を感じているか記述します。

カミュは正しいと思って発した自分のことばが、どこかで誰かを傷つける可能性のあることにとまどい、その可能性を知りつつ発した自分のことばが間違いで、誰かを傷つけてしまうことに怯えていました。また、峯田さんは、多様性のおかげで世界は面白く、寛容なのに、世界が一つになるとそれらが失われ、みんなの意見・考えが一つの方へ流れ、同調圧力となり、世界が狭く、息苦しいものになっていくと思っています。そのような中で筆者は、カミュの人を傷つけることばにならないように決して気をゆるめず、意志と緊張をもってことばを発し、書くことをやめなかった点と、世界と自分は本来違うものであると考える峯田さんの、その違いを残すために誰ともつながろうとせず、今あるつながりを大切にしようとしている点に希望を感じていたのですね。また、ニュースでさまざまな意見が出ていますが、筆者は問題を解決するために、性急に結論を求めず、納得がいくまで調べて自分の考えを深めていこうと強く思ったのです。ラジオ番組ということで読みやすく、最近のニュースも取り入れながら、筆者の思いを読み取る問題でした。

大問2物語文 出典は岩瀬成子『ひみつの犬』(2022年10月初版)から。

主人公の羽美とお姉ちゃんが買い物から帰るとき、重たそうに荷物を持っているおばあちゃんに姉が「大丈夫ですか」と声をかけ、荷物を持ってあげます。そのおばあちゃんが今井さんであることに羽美は気がつきます。今井さんは羽美たちであると気づいていません。

実は今井さんは以前近所トラブルがあった人だったのです。犬や猫などのペットが飼育できる椿マンションの猫が、今井さんの家の庭にうんちやおしっこをしたことに仕返ししようとし、椿マンションの入り口に生ゴミを捨てたり、近所に椿カイロプラクティックの悪口を書いた手紙を配っていました。この一件で美羽は今井さんの何が正しいのか、正しさの意味がわからなくなっていました。一方、お姉ちゃんも、お母さんが病気で困っている友達のかすみちゃんの役に立ちたいと思い、お手伝いをしていましたが、かすみちゃんの両親の離婚の理由まで話をつっこんだのが原因だったのか、敬遠されてしまいます。二人は宝ヶ池という池まで散歩をします。いい人悪い人とは簡単には言えないこと、羽美が悩みながらも今井さんや友達について考えたことは無駄ではないことを話し合い、家へ帰るのでした。

問4 「いい人間になろうと自分で思って何かするってことはまちがいだった」とお姉ちゃんが言う理由をくわしく説明します。

問5 お姉ちゃんが羽美をすぐ近くの宝ヶ池までさそった理由をくわしく説明します。

何が正しく、何が悪いことなのか。お姉ちゃんは羽美から今井さんの隣近所に対する反応を聞き、今井さんはまるっきり悪い人ではなく、孤独から冷静な判断ができなかったのだと考え、羽美に伝えようと思ったが、素直に聞いてもらえそうにないので、子供のころの良い思い出がある場所で素直な気持ちになってもらい、時間をかけて話した方が良いと思ったので宝ヶ池を話す場所に選びました。そしてお姉ちゃんは、自分の悪意のない一言や、親切にしようとしたことが、結果的に友達を傷つけてしまった経験から、いい人の全部が良かったり、悪い人の全部が悪かったりするとは限らないことを羽美に伝え、今井さんも全くの悪人ではないことに気づいてもらおうとしたのですね。今井さんのことで悩んでいた美羽。優しく語りかけるお姉ちゃん。二人が宝ヶ池で話した場面では、美羽とお姉ちゃんのそれぞれの思いがセリフを通してあざやかに描かれています。各場面でのできごとと登場人物の心情を桜蔭特有の大きな解答枠に目いっぱい記述し説明する力が試される物語文でした。

以上、お読みいただきありがとうございました。今後もさまざまな国語文章に触れ、学習に取り組んでいきましょう。(佐藤)

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