入試が終わって2週間近くが経とうとしています。今年も社会科では興味深いテーマがたくさん取り上げられましたが、複数の学校で出されているものもありました。例えば、桜蔭と女子学院では水資源が、筑駒と開成では生成型AI(対話型AI)が出題されています。複数の学校で出題されるということは、それだけ社会全般にとって重要視するべきテーマであり、受験生の皆さんにも考えてほしい内容だということです。特に生成型AIは、使用方法やリスクとの向き合い方についてさまざまな議論を呼んでおり、未だに「正解」が手探り状態であるものの一つです。私たちはつい「正解」を出すことを急いで、端的に結論を出すことを良しとしがちですが、そこをぐっとこらえて熟慮するべきものがあるということを、問題を通して伝えているように思います。
こうしたテーマでなくても、入試では「白黒つかない」に向き合わなくてはならない場面がたくさんあります。最難関中学を目指す生徒さんであれば、3年間かけてたくさんの知識を身に着け、万全の準備をして入試に臨むのが当然ではありますが、それでも、習ったことがない内容や、極めて高レベルな知識が問題に盛り込まれることがあります。思わずぎょっとしてしまいますが、こうした問題を「捨て問」とせずに向き合い、少しでも得点できるかどうかが合否の分かれ目になることもたくさんあります。特に、適文(誤文)選択の問題は、用語を書いたり選んだりする問題とは異なり、他の選択肢から類推して考えることができるので狙い目ですが、正解するためには「○×が判断できない選択肢をいったん保留して先に進む勇気」が求められます。例えば、アからオの選択肢から2つ誤文を選択する問題で、ウまで読んだときの判断が次のようだったとします。
ア:明確に○
イ:明確に×
ウ:知らない内容が含まれていて判断がつかない
もし、ここでウを保留にせず、○(適文)と決めつけてしまったらどうでしょうか。「その後のエ・オに必ず×がある」という思い込みを持って先に進むため、エ・オの読み違いを起こす可能性が高くなります。ウを×(誤文)と決めつけた場合はさらに悪いことになります。この時点で×が2つできてしまうため、エ・オを読まずに回答してしまいがちだからです。この場合に求められるのは、ウを保留にしたままエ・オの○×を判断し、それからウに戻って最終的な判断をするという行動ですが、これは口で言うよりもかなり難しいことです。一生懸命勉強してきた生徒さんほど、向上心の強い生徒さんほど、保留のまま進むことに不安になってしまうからです。新小6の皆さんは今後、問題演習や模試などでこういう事態に直面することがあると思います。そのときはぜひこの話を思い出し、ぐっとこらえて我慢する練習を積んでみてください。1年後にきっと役に立つはずです!