先日、2024年のNHK大河ドラマが「光る君へ」に決まったことが報じられました。タイトルの「光る君」から想像できる通り、平安時代を舞台に「源氏物語」の作者である紫式部の一生が描かれます。2017年の「おんな城主 景虎」以来7年ぶり、歴代では15作品目となる、女性が主人公の大河ドラマとなります。15作品のうち2つは架空の人物、3つは夫婦によるダブル主演であることをふまえると、今回の注目度はさらに高まるかもしれません。
大河ドラマとしての最初の作品が放送されたのは1963年のことで、「光る君へ」は63番目の作品となります。大河ドラマの主人公として取り上げられるのは、やはり歴史の教科書に太字で載っているような著名な人物が多くなっています。その中でも以下の人物は複数回主人公に選ばれており、関心と人気の高さを伺わせます。
2回:平清盛・源義経・豊臣秀吉・坂本龍馬・西郷隆盛
3回:大石内蔵助・徳川家康(2023年「どうする家康」を含む)
これらの人物は、主人公以外の登場人物となることも度々あります。そのため、物語の進行や他の人物との関係性によって、キャラクターには微妙な違いが生まれます。また、歴史の研究とともに新たに出てきた解釈が作品に反映されることもあり、それらの違いを楽しめるのも魅力です。徳川家康も来年で3回目の主人公となりますが、皆さんのイメージ通りの家康なのか、それともまったく違う人物として登場するのか、そのあたりに注目して視聴するのも良いでしょう。「光る君へ」の紫式部も、生没年や本名など今でも分かっていないことが多い一方、「鰯を好んだ」「清少納言を良く思っていなかった」など様々な逸話がある人物ですから、そのあたりがドラマの中でどのように解釈され、どのように演出されるのかが楽しみですね。
一方、人物だけでなくドラマが扱う時代にも大きなばらつきがあります。戦国時代から江戸時代にかけて作品が集中する一方、昭和時代を含む作品は4つにとどまり、うち2つは架空の人物が主人公です。また、全作品の中で最も古い時代は平安時代中期(1976年「風と雲と虹と」主人公:平将門)であり、奈良時代以前を扱った作品はまだありません。つまり、「光る君へ」は歴代の作品では2番目に古い時代のものということになり、藤原氏を中心とした摂関政治の時代を扱った初めての作品となります。歴史の資料集には色鮮やかな十二単や束帯、貴族の豪華な邸宅の写真が多く載っていますし、物語やマンガでも華やかな描かれ方をされる時代ですが、一方で(貴族であっても)衛生状態が悪く、平均寿命も短い時代でした。視聴者の多くが描くであろうイメージに寄せていくのか、より現実的に描くのか、人物だけでなく時代全体の表現にも、ぜひ注目してみてください。