受験生にとって天王山とも言うべき夏が終わりました。十分成果を出せた人、思いの外はかどらなかった人…と、思いは様々でしょうが、一喜一憂している暇はありません。残された時間を、いかに有効に使うかを考えなくてはなりません。
毎年、この時期に受験生に話すことの一つに、「出題者の意図を考える」ということがあります。学校の国語の授業であれば、「自由な発想」も認められますが、合否を決める「入試」においてはそうはいきません。公平を保つという観点からも、きちんと根拠(手がかり)を見つけて解かなくてはなりません。その理由をお話ししていきましょう。
小6の受験生は9月からPA(志望校別講座)も始まり、学校別合判テストや過去問演習で実践力を養う時期となりました。これからは1回ごとのテスト・演習は入試本番のつもりで取り組む必要があります。「真剣さ」は、日頃から意識せずに身につくものではありません。
皆さんは国語の問題に接するとき、どういう点に注意して問題に向き合っていますか?
「時間配分を意識している」
「解きやすそうな問題から解くようにしている」
「ケアレスミスのないように、必ず答案を読み直している」
等々、「意識して」問題に取り組むことは大変重要です。特に、今までの自分の解き方を振り返って「よくない点」を自分なりに見つけ、それを改善していく意識を持つだけで結果もかなり変わってくるでしょう。
ところで、問題を作る側の立場から、採点しながら毎年思うことがあります。
「どうして設問をよく読まずに解こうとするのだろう…?」
読解問題であれば、本文をしっかり読まなければ問題の解きようがありません。ですから、大半の受験生は本文をきちんと読もうとしているはずです。でも、「問一・問二…」という設問についてはどうでしょう?
読解問題に使われる文章には作者がいます。でも、受験生がテストで答えるのはその作者に対してではなく、設問を作った人、つまり作問者に答えるのです。「出題者の意図」を考えながら説くことが重要になります。
作問者が問題を作る際、できるだけ受験生が答えやすくなるように設問中に「答え方」の指示をすることが少なくありません。しかし、そうした設問の指示を全く無視した答案が毎年見られます。せっかく「ヒント」が書かれているのに、そのヒントを無視したような答案です。力が足りず解けなかったのならあきらめるしかありませんが、わかっていながら指示を見落としたために得点できない、ではもったいないですよね。
設問中の「答え方」についての指示は必ずチェックし、出題者の意図(何を答えさせたいのか…?)を考える意識を持ちましょう。
二十年以上前のこと、筑駒でまだ記号選択問題が多く出題されていた頃、こんなことがありました。
その年は記号問題が三問あったのですが、二問は設問に「次の中からもっともふさわしいものを選び…」と書かれていたのですが、残る一問は「次の中からふさわしいものを選び…」となっていました。
そして、その一問はどう考えても正解が二つあったのです。
普通、二つ以上選ばせたい場合、設問に「ふさわしいものをすべて選び…」のように指示することが多いのですが、この設問ではそうなっていませんでした。ただ、三つの選択問題の設問をしっかり読んだ受験生なら、「なぜここだけ『もっとも』がないのだろう…?」と気づけたことでしょう。そうした注意力の差が得点の差に表れるのです。
来年の入試までまだ時間はあります。今まで特に意識せず問題を解いてきた人は、是非こうした意識をもって取り組むようにしてください。合格発表を笑顔で迎えるために。