超難関校受験希望生のための「国語在宅学習法」

2020/4/27

エクタス国語科より

①国語学習の心がまえ
塾の宿題だからと(仕方なく)問題を解いている人はいませんか。というかほとんどの人が、たまたま出合った文章が宿題になっていたところの文章だった、というのが正直なところですよね。
ところが、世の中で入試や模試のために書かれた文章は、基本的に一つもありません。入試問題や塾の模試や教材で、使わせていただいているわけです。実際には、筆者が読者に向けて、何か伝えたいことがあって、文章を書いているわけです。授業中や模擬試験等時間の制約がある時にはゆっくり味わって読むわけにはいきませんが、家で宿題をする時には、問題を解いた後でもかまいませんので、是非、この筆者は、何について書いているのかな、それに対して何が言いたいのかな、ということを考えてみましょう。
問題を「解く」だけが国語の勉強ではありません。問題を「味わう」、「筆者の思いに触れる」ということも、国語力向上の大切なポイントになります。

②「題材」と「主題」を常に考える
①で触れた心がまえを具現化するためにも、
 題材:筆者は何について書いている文章か。
 主題:筆者はその題材に対してどのような意見を持っているか。
を考えてみるようにしましょう。
題材についてはなるべく簡潔に答えてかまいません。例えば「読書について」書いてある文章だとか、「友情について」書いてある文章だとか。
「読書について」筆者がどのようなことを言いたいのかが、「主題」ということになります。同じ「読書について」でも、若い時は特定のジャンルにこだわらずたくさん本を読みましょう、という「多読のすすめ」という場合と、若い時はあれこれ中途半端に手を出さず、まずは一冊をじっくり深く理解出来るように読み込もうという「味読(精読)のすすめ」という場合があります。「読書について」という同じ「題材」でも、筆者の意見は異なるわけです。その筆者の意見、言いたいことこそが「主題」ということになります。
この「題材」と「主題」を常に考える意識を持つことが、文章の内容を深く正確に理解する上で大切なこととなってきます。この時期、在宅の時間もあることですし、ただ「問題を解いて終わり」ではなく、「題材」「主題」をしっかり考える時間を取りましょう。

③どうすれば国語が出来るようになるかの「判断基準」をしっかり持つ
問題をたくさん解けば出来るようになるのでしょうか。残念ながらそうではありません。(もちろん一定の演習量は必要ですが。)書いてあることを書いてあるとおりに読めた時に、問題の正答率も上がってくるはずです。
ここで問題を作成する側の立場に立って考えてみましょう。入試問題でも塾の模試でも教材でも、普通文章を書いた筆者と作問者は別の人です。例えば「太郎君はうつむきました」とあった時、作問者も、「太郎君はなぜうつむいているのかな。その理由はどこでわかるのかな」と考えて、記号問題にしたり、抜出問題にしたり、記述問題にしたりして、作問しているわけです。ですから問題を解く方も、「太郎君はなぜうつむいているのかな。その理由はどこでわかるのかな」を考えて、その理由となる場所がきちんと見つかれば、理論上は答えも作問者が用意したものと一致するはずなのです。
「国語は問題を解いたから出来るようになる科目ではなく、文章を作問者と同じように理解できた時に正答率が上がる科目である」ということをしっかり認識しましょう。

④文章をどのくらいしっかり正確に読めるかが決め手となる。
作問者が「しっかり正確に」文章が読めているという前提に立つと、皆さんが文章を「しっかり正確に」読めたとしたら、内容の理解力は作問者と同じレベルになったと判断出来ます。
ですから、まずは作問者の意図を考える前に、文章と向き合う必要があります。文章に書いてある内容を「しっかり正確に」理解するよう努めましょう。論説文と物語文に分けて、文章との向き合い方を考えてみましょう。

⑤論説文の場合 「二つの概念の対比」をつかむ
論説文の場合、必ず「二つの概念(考え方)」が対比されて(比べられて)います。それがなければ「論説」になりません。例えば「エチオピアでの感情と日本での感情の違い」(2019年開成)では、筆者がどちらを良いものとして捉えているか、をつかみます。次にその理由はどこにあるのか、をつかみます。エチオピアでの感情がプラスの評価なのですが、それはどのようなものなのか、どのような点で良いのか。日本での感情はマイナスの評価なのですが、それはどのようなものなのか、どのような点で悪いのか。
「二つの概念の対比」を早くつかみ、筆者はどちらの考え方を支持しているのか、を読み取るようにしてください。

⑥物語文の場合 「動作から心情を読み取る」
「うれしかった」とか「悲しかった」とか、直接心情が書かれている場面では、答えやすいですね。気持ちはわかっているのだから、その理由を読み取ればよいわけです。
難しいのは、気持ちが直接書かれていない場面です。例えば③にあるように「太郎君はうつむきました」の場合、なぜうつむいたのか、その時の気持ちはどうだったのか、この記述だけではわかりませんね。皆さんもうれしくてもあまりはしゃぎすぎなかったり、くやしくてもぐっとこらえたり、悲しくても平気を装ったりしますよね。登場人物も同じです。ただ、文章中のどこかに気持ちと理由がわかる記述があるはずです。
「動作だけの描写だが、大切な心情がかくされてありそう」な記述を意識して文章を読み、「そのような場面での、登場人物の心情とその理由」を文中の記述を根拠にして考えてみる。この作業を地道に続けてみて下さい。心情把握力が少しずつ深まっていくはずです。

⑦皆さん、あとは実践あるのみ
理論だけでは出来るようになりません。泳ぎ方の本を読んだだけでは、泳げるようにならないのと一緒です。水に入らなければだめですよね。
「題材」「主題」「二つの概念の対比」「動作から心情を読み取る」を頭において、ぜひまずは「文章」ときちんと向き合い、接してみて下さい。健闘を祈ります。

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