難易度・形式ともに、例年と大きな変化はみられません。大問2題とも比較的読みやすい文章でしたが、設問は受験生にとって難度が高く感じたのではないでしょうか。
大問1
井岡瞬『教室に雨は降らない』より
優等生で、特に秀でた歌唱力を発揮する小6・鈴木。まじめに歌っても音程をずらしてしまう親友・野口。鈴木は、野口が杓子定規な白瀬教諭から理不尽に叱責される姿に深く同情。結果、わざと下手な歌声を披露して、抵抗の意図を表明。
純粋な少年らしい義憤を貫く、鈴木。
白瀬教諭に一目置くがゆえに、鈴木の変化の原因を隠蔽しようとする、教頭。
大人と子どもの思惑を静かに見守る、臨時講師・森島。
大人は善、先生は善という通念を前提に読んでしまうと解答がずれていきます。
文脈から読み取れる心情を冷静に客観的に判断していく必要があります。
●注目問題
①ごく基本的な知識問題が出題されました。
問二「慣用表現の理解」 (くぎ)をさされていた、(目)をかけていた
問四「反対語の熟語理解」 立て前⇔(本音)
②記述問題が2問出題されました。
問八「白瀬教諭」の心情把握問題
問十「教頭」の心情把握問題
ともに、大人の心情を読み取る問題の出題でした。
大問2
河合隼雄『子どもの本を読む』より
心が満たされない現代社会において、児童文学から、大人の常識をこえた子どもの突く真実を汲み取り、生きる意味を考えることには大きな意義があるだろう。
読みやすい文章だったので、解きやすかったのではないかと思います。
●注目問題
①意外に間違いやすい知識問題が出題されました。
問二「語句の意味」 「けげん」「あこぎ」「さらに」の意味を四択で選ぶ問題
問六「満足である」の主語をきく問題
②「比喩表現の理解を問う記述問題」が出題されました。
問四 「うちに宗教がない」とあるが、これはどういうことか。
ここでの「宗教」はキリスト教や仏教のような宗教のことではありません。この表現が実際に何を指しているのかを読み取り、まとめる必要があります。
本校の問題に、奇抜で奇を衒(てら)ったような出題は見あたりません。漢字・語句、要点・細部の読解、心情の把握…といった当たり前のことについて、きわめて高度な完成度が求められます。過去問演習以前の段階において、塾や家庭での常日頃の学習精度を高めることこそが、合格点獲得への近道といえるでしょう。