例年、3つの大問で構成され、おおよそ、時事を含んだ総合問題、歴史分野、地理分野が出題されます。今年は、
1 「電子レンジ」をテーマとした時事を含んだ総合問題
2 「数値」からみる日本の歴史
3 「都道府県のシンボルマーク・花・木・鳥・魚」に関連した地理分野中心の出題となりました。渋谷幕張は、基本知識の定着はもちろんのこと、詳細な知識の定着が問われます。それに加え、時事を織り交ぜた問題も目につくため、量的に知識が豊富である子には有利です。しかし、このことは、最難関校には、総じて言えることなので、渋谷幕張に限ったことではありません。
渋谷幕張は、豊富な知識量が求められます。その知識は二つに分けられます。
一つは、いわゆる受験用として学習した知識で、基本事項からしっかりと関連性を持たせた詳細な知識まで定着させていることです。今年出題された、「元寇後、没落した御家人に代わって北条氏の権力が強まったこと」や「1906年以降国鉄の営業距離数が増えている理由を答える」という問題は、<元寇~生活苦となった御家人~永仁の徳政令>や<明治時代における産業の発達>について、それぞれの時代のキーワードとなる基本かつ重要な事項(流れを理解するための知識)を説明する際に、簡単な(十分に時間を確保することのない)説明で終わるような知識、つまり、歴史の流れを理解する上ではそれほど必要性が高いとは言えない問題です。ですから、日頃学習していく中で、主流となる歴史の流れの枠にしっかりとはめ込んで(関連させて)勉強しているかどうかが問われることとなり、そういった意味で求められる知識のレベルは高いといえます。
二つ目は、日常で得られる知識。昨年の「テレビ放送」(放送60年目という意味もあったと思いますが)もそうですが、今年の「電子レンジ」をテーマとした入試問題では、電子レンジの「家事を行うにあたっての利点」や「動かなくなる場合の例(ドアを用いて)」、さらには家庭の電力消費へと展開して「ブレーカーが落ちて電気が使えなくなる理由」など、生活の中に溶け込んで疑問に思いにくい事柄といえ、日常生活の中に社会科の「ネタ」がたくさんあることに気づかせられます。また、時事問題もニュースや新聞等で日々情報収集できる知識といえ、そういった観点から「社会の関心」の程度を計る出題であるといえるでしょう。
知識量だけが問われる問題では決してありません。それは、テーマの選択と問題文があげられるからです。最難関校は、過去の入試問題において取り上げられることのなかった(または少ない)テーマ設定が非常に多くあります。今年の渋谷幕張は、「電子レンジ」をテーマとして、主に戦後~現在までの時事を含んだ出題、「数値」からみる日本の歴史では、ある役職の就任数からみた鎌倉時代~江戸時代までの出題など、テーマ設定が工夫されています。また、解答するための問題文についても、手がかりを極力なくすか、あったとしても表現で巧みに隠すことで、求められる解答が基本的な知識であるとはいえ、その出題方法によってレベルを一気に高くしています。
合格者平均点が、2013年は36.7点、2012年は31.4点、2011年は41.2点で、今年2014年は43.8点となりここ数年では最高となりました。難易度が下がったとは一概に言える訳ではないのですが、例えば記述問題においても、学習した範囲内の出題が例年より多く(詳細な知識とはいえ)、複数の手がかりも残しておいたことで、それを見逃さなかった「読解力」に長けた受験生は、しっかりと読み取って解答したことが伺えます。また、例年出題されている難易度の高い「地形図」の問題がなく、3「都道府県のシンボルマーク」が出題されたことも合格者平均点を上げた要因になったかと思います。受験生にとっては、解きやすい問題が多かったと考えられます。しかし、この問題は、各都道府県の旧国名や地名・産物等についての地理分野の総合力が問われる問題なため、地理分野のしっかりとした学習をしなければ取りこぼすことになります。
今年の渋谷幕張は、難易度が高く多くの受験生が苦手とする「地形図」の出題がなかっただけで、決して難易度が下がったわけではありません。時事を含めた選択肢、手がかりの少ない記述問題等、非常に高度な読解力が求められる問題であることには変化はありません。渋谷幕張を志望している受験生は、知識量だけでなく、関連性を持たせた学習の仕方と時間をしっかりと確保していく必要があるでしょう。