ケアする側が「強者」として連帯し、患者達をいたわる反面、被介護者を弱者として差別する危険性を指摘した大問1(鷲田清一『大事なものは見えにくい』)。ほしがる物をすぐに買い与えず、貯金の過程を経験させることで、息子に物やお金の大切さを伝えようとする父の姿と、貯金箱に愛着をわかせ、守りぬこうとする息子の心に芽生えた「他者を愛する心」をテーマにした大問2(エトガル・ケレット『ブタを割る』)。以上2つの大問で構成されています。
大問1~漢字5題、語句の意味2題、要点の記述2題。
大問2~心情記述4題。
本文は、両問ともに2ページ強の分量で、短めです。
記述は、いずれも、ます目のない2~3行枠が採用されています。近年、この体裁はすっかり定着しました。
大問1は、本文に忠実に要旨・要点を整理していけば、対応できるものです。過去問演習をきちとやりこんできた受験生にとっては、むしろ得点源になりえます。
大問2は、問2において、父の語る「克己心」とぼくの語る「こっきしん」の表現の違いにこめられた心情を問う出題がみられました。父が息子の成長を評価した点と、父の言葉に追従し、何とか貯金箱を壊さないですむようにさせてほしいと懇願する息子の気持ち…双方に着想できた受験生は、大幅にリードしたといえそうです。
端的に、ポイントを絞り込んで記述させる開成中の基本的な出題コンセプトは、本年も健在であり、就中、上記のような一部の難易度の高い問題に対処できるかどうかが、勝負を分けるでしょう。
次年度以降の受験生のみなさんは、心して臨んでください。