Ⅰ 日本の食文化に関する地理・歴史の総合問題
Ⅱ 公民分野の正誤判定問題
昨年と比べ大問数が2題となりましたが大きな変化はありませんでした。また難易度も例年並み(昨年は少し易しめでした)で,今年も「桜蔭らしい」入試だったと言えます。
出題形式を見ると,昨年4問に増えた記述は例年並みの2題に戻りました。また,昨年から姿を消した「すべて正しい場合はエ(あるいはオ)と答えなさい」という選択問題は今年も出題されませんでした。いずれにせよ大きな変化とは言えず,しっかり対策をしてきた受験生にとっては混乱をきたすようなことはなかったでしょう。
Ⅰでは,地理・歴史分野の幅広い単元からまんべんなく出題されています。問3の田植えの最盛期を答える問題では,単純に緯度が高くなるにつれて田植えが遅くなるわけではなく,栽培品種や二毛作との兼ね合いによって時期が決まるということが問われています。上川盆地より筑紫平野の方が遅いというのは,なかなか気づきにくい点かもしれません。問4(2)の「おから」と答える問題は,日常生活に題材をとった桜蔭の社会らしい出題でした。問7では,縄文時代晩期に稲作が行われたことが分かる板付遺跡(福岡県)を答える問題で,桜蔭中の社会ではこのレベルの知識も求められています。問18(1)の年代判定や問19の並び換え,問21の正誤判定などは,まさに桜蔭らしい近現代史に関する出題で,正確な知識の蓄積と理解度が試されています。
記述問題は2問出題されていますが,そのうちの問5が,今年の入試では最も手ごわい問題だったと思われます。醤油の1人当たり年間購入量と1人当たり年間出荷量の変化を示した表を見て,年間購入量と年間出荷量の減少幅に差が見られる理由を答えるものでしたが,リード文中にある「和食特有の食材が輸出され」ている点を除いて考えるとなると,理由を2点挙げるのは難しかったのではないでしょうか。日本人の食の簡便化が進んだということが考え方の根底となるわけですが,受験生を大いに悩ませる出題だったと推察されます。一方,問13では江戸時代の農民がどのようにして貨幣を獲得していたかを問うもので,比較的容易に解答できたと思われます。
Ⅱの公民分野の出題は,ある「ことがら」について説明した4つの文のうち適切でないものを選び,さらにその「ことがら」を答えるという形式で,難易度はさほど高くありませんが落ち着いて取り組まないとミスを招いてしまうので注意が必要です。特に3の天皇の国事行為や,5の社会権については,日ごろの学習で「間違えやすいポイント」をおさえていくことが大切だと気づかせてくれる問題でした。
合格のためには,どの分野もまんべんなく問われる学校なので極力「穴」を作らないことが大切です。また,発展的な知識量をとにかく増やすというよりも,受験勉強を通して何度も出会うような重要事項について,一つ一つの意味を丁寧に理解しながら,その背景やつながりをまとめる練習が欠かせません。また,今年は出題数も少なかったですが,正誤を判断する選択問題の難度が高いことが桜蔭の社会の大きな特色ですから,日ごろの学習でもこの点を意識して取り組むことが重要でしょう。