5月21日、全国の広い範囲で金環日食が観測されました。国内では1987年に沖縄で観測されてから25年ぶり、東京を含む首都圏では1839年に観測されてから173年ぶり、三大都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)全域では1080年に観測されてからなんと932年ぶりに観測をすることができました。
太陽-月-地球の順に一直線上に並び、太陽の一部もしくは全体が月に隠されてしまう現象を日食といいます。地球から見て月の方が大きく見えると太陽がすべて隠される皆既日食、月の方が小さく見えると今回のような金環日食となります。このように月の見かけの大きさが変わって見えるのは月の公転面が完全な円ではないからです。
このように公転面が完全な円ではないことや、公転面が地球と比べて傾いていることは日食が起こるメカニズムを考えると大変重要であり、中学入試でもよく出題される内容です。
月の満ち欠けの周期は29.5日です。今回のように日食となる新月に月はおよそ一ヶ月に一回なる計算です。しかし毎月日食を見ることはできません。それは地球の軌道面(公転面:以下)に対して月の軌道面が5度ほど傾いて交わっているからです。地球と同じ面上を公転しているのではなく、地球から見ると南北に傾いて公転しています。このため、太陽、月、地球が一直線に並んだときにのみ日食が起こります。
2012年にはもう一つ、大変めずらしい現象が観測されます。6月6日、金星が太陽の表面を横切って見える「金星の日面通過」が観測できます。これは大変めずらしい現象で、前回観測されたのが2004年ですが、次回観測できるのは2117年で、なんと今回の観測が21世紀最後です。なぜこのようになかなか観測ができないのか、これも地球の軌道面と金星の軌道面が傾いているためです。
金星はおよそ584日に一度内合と呼ばれる状態(地球から見て太陽と金星が同じ方向に見える)になりますが、地球の軌道面に対して金星の軌道面は3.4度傾いています。このため、金星が地球の軌道面を横切るのは6月と12月の年に2回だけです。この前後にしか金星の日面通過は起こらないため、たいへんめずらしい現象となっているのです。
このように日面通過が見られる天体は他にもあります。地球と太陽の間に入り込めば良いわけですから、内惑星が該当します。ですので水星も日面通過が見られる天体です。前回は2006年、次回は20年後の2032年に観測できます。
日食も日面通過も言わば太陽の一部や全体を「隠してしまう」現象です。そのためには地球と太陽の間に入り込む必要があります。そしてそれぞれの公転面が傾いていることにより毎回観測することはできず、大変めずらしい現象となっています。
これらの現象はメカニズムを理解していると観測したときの感動が大変大きくなります
ぜひ、6月6日の「金星の日面通過」に向けて、金星のことを調べてみて下さい。観測するときには「日食グラス」を忘れないで下さいね!
写真は埼玉県で撮影した日食の様子です。