2024年度の中学入試が終了しました。受験生の皆さんはお疲れ様でした。
今回はその中で駒場東邦中の入試について取り上げます。
駒場東邦中の入試は個人的には数学的要素が強い傾向があると感じています。本年もそんな出題がありました。学校ごとに出題傾向がありますが、これは単なる見た目やジャンルの問題ではなく、学校側が「どのような考え方を受験生に大切にして欲しいのか」が現れるところです。
大問1(3)※簡単に書き直しています

上の図のような正方形のタイルを並べて模様をつくります。次の形に並べるとき、何通りの模様が考えられますか。ただし、回転して重なる模様は1通りとして考えます。

実際のところ、試験時間内では①だけ正解できれば十分なレベルです(①もミスしやすいですが)。
実はこの問題はある有名な数学的な題材に基づいています。「バーンサイドの補題」と言われるものです。
ですが、中学受験生がこの決まりを正しく理解した上で使いこなすことは現実無理だと言えるでしょう(表面上この考え方で答えを出すことはできますが)。そういった公式というか「解き方」を覚えることが大切だと言いたい訳ではありません。ただ、我々教師側の立場としては、この学校の入試問題ではこういった題材が背景にある問題が取り上げられる可能性が他校に比べて高い、と把握して上で指導に当たっています。また、きっと中学に進学後には「バーンサイドの補題」が授業で扱われることもあるかと思いますし、そのときにこそ、再度この入試問題を考えるきっかけになって欲しい。受験のためだけの勉強ではなく、合格してその学校の生徒として先生の指導を受けてさらに成長していく…、そんな志望動機であって欲しいとの学校側からのメッセージだと思うのです。
ちなみに、先ほどの問題ですが、②について考え方の指針を書いておきます。
回転して重なるものを1通りとしたい→つまりは点対称の扱いですので(②と③は180度回転して重なる形です)
②なら


に場合分けして考えます。両者は等しいので片方考えて2倍です。


の数が、
0マスのとき … 1通り
1マスのとき … 2通り A=D、B=C
2マスのとき … 4通り AB=CD、AC=BD、AD、BC
3マスのとき … 2通り (1マスのときと同じ)
4マスのとき … 1通り (0マスのときと同じ)
全体が対称になっていることに注目します。
(あ)と(い)を考え、10×2=20通りです。
〈別解〉
AとD(BとC)の模様が同じ場合はその部分は回転させても見た目が変わりません。
一方でAとD(BとC)の模様が異なる場合はその部分は回転させると見た目は変わりますが同一のものをダブって数えていることになります。
(ア) AとDが同じ、BとCが同じとき 2×2×2=8通り
(イ) AとDが同じ、BとCが異なるとき 2×2×2=8通り
(ウ) AとDが異なり、BとCが同じとき 2×2×2=8通り
(エ) AとDが異なり、BとCが異なるとき 2×2×2=8通り
そのうち(イ)(ウ)(エ)に関しては同じものをダブって数えているので
8+8×3÷2=20通りとなります。
見た目はシンプルですがとても深い問題です。じっくりと考えてみましょう。