中学入試に向けた地理の学習では、山脈や平野、湖、河川などの名前を覚える機会が多くありますね。生徒の皆さんも、地図帳を開いて場所を確認したり、間違えそうな漢字を繰り返し練習したり、白地図に自分で書き込んでみたりと、さまざまな方法を駆使して学習に励んでいることだと思います。
今回はその中で河川に関するお話しをしようと思います。
日本は国土が狭く山がちであるため、河川には「長さが短く,流れが急である」という特徴があることを知っていると思います。確かに日本の河川は世界の河川と比べると短く、中には支流もふくめて1つの都道府県の中におさまる河川もあります。
しかし、中学入試でよく取り上げられるような大きな河川は、複数の都道府県にまたがって流れていたり、流れている場所によって名前が異なっていることがあるので注意が必要です。例えば、日本で一番長い河川である信濃川は長野県から新潟県にかけて流れていますが、新潟県内では「信濃川」、長野県内では「千曲川」と呼ばれ方が変わります。また、滋賀県・京都府・大阪府を流れる淀川は、上流から順に「瀬田川」「宇治川」「淀川」と2回も名前が変わっています。
ですから、「○○川は、△△県にある」「○○川の河口は、××県にある」といった覚えかたで済ませるのではなく、流れている場所や名前を丁寧に確認することが大切だと言えるでしょう。
さて、皆さんは世界の河川についてはどのくらい知っているでしょうか。
日本の河川ほど多く出題されることはありませんが、少なくとも「世界の長い川1位~3位」くらいはおさえておくことをおすすめします。また、できれば統計資料などで長さを確認し、日本の河川とは比べ物にならないほど長い河川が多いことを知っておいてください。
こうした世界の大型河川の中には、複数の国をまたいで流れている河川が数多くあります。例えば長さが世界一のナイル川は、支流を含めると10か国以上を流れていますし、ヨハン・シュトラウス2世作曲のワルツ「美しく青きドナウ」で知られるドナウ川も、ヨーロッパの10か国をまたいで流れます。これらの河川は勾配が緩やかで、内陸部と沿岸部を結ぶ重要な交通路になっているため、沿岸の国以外の船舶の通行が認められた「国際河川」に指定されています。
また河川の名前は、言語や地域によって違う呼ばれ方をされるだけではなく、時代によって呼ばれ方が変わることもあります。チェコ出身の作曲家、スメタナは交響詩「わが祖国」の中で、エルベ川の支流の1つであるヴルタヴァ川を描いた「ヴルタヴァ」という曲を作っていますが、日本ではこの曲は「モルダウ」として知られています。これは、この曲が発表された当時、チェコがオーストリア=ハンガリー帝国の支配下にあり、公用語がドイツ語であったことや、1939年から1945年にかけてチェコにドイツが進駐していたことなどにより、ドイツ語読みの「モルダウ」として広まったのが原因だそうです。現在の地図帳を見ると「ヴルタヴァ」と「モルダウ」の併記もしくは「ヴルタヴァ」のみで表記されることがほとんどですが、こうしたところから、河川やその地域がたどった歴史が垣間見えてきますね。