大問1「物理:ボイル=シャルルの法則」
開成の物理では、力学、電流、運動、光などの分野からまんべんなく出題されます。今回はその中から「圧力と温度」についての出題。気体の体積が温度とともにどのように変化するのかを問う問題でした。問1では表の値からグラフを描かせる問題が出題されましたが、開成ではグラフを描かせる、正しいグラフを選ばせるといった数値からグラフのイメージをつくれるかどうかを問う問題が出題されることが多く見られます。その点で、この一問はとても開成らしい出題と言えるでしょう。設問は特に難しい問題はないため、ここでの失点は命取りです。
大問2「化学:実験器具」
開成の化学では、テーマとして水溶液、実験器具、燃焼などを取り上げられることが多いのが特徴です。設問としては、水溶液や金属の性質、実験器具の操作方法といった知識問題、中和計算や気体発生量計算、とくによく出る溶解度計算のような計算問題も出題されます。ただ、よくつくられた問題が多いため、いたずらに計算力の必要な問題では無く、計算方法を理解しているかどうかを問うてきているようにも思えます。今回の出題は実験器具の操作方法ばかりでした。どの問題も知識で解ける標準的な問題ですが、メスシリンダーの読み取りの問題では、最小目盛りの10分の1まで読み取ることがきちんとできていないと失点します。
大問3「地学:月、星座」
開成の地学では、直近1~2年間に起こった現象、出来事(理科的な時事問題)がテーマとして取り上げられることが多く見られます。特に、その年度に起きた天体現象(太陽、星座、宇宙、月)です。また図の読み取り、図を書き込ませ、解答させるような問題までも出題しています。気象では気温や降水量などのグラフの読み取りの問題が多くみられます。今回は前半に月と星座、後半に時事問題の金環日食を出題してきました。金環日食が起こる月の位置を作図で求めさせたり、月面から見る日食の問題などがありました。ここでも失点できないものばかりです。
大問4「生物:葉序」
開成の生物では、昆虫と花に関する出題が多いのが特徴です。開成オリジナルの図が与えられ、種類や特徴などの知識が問われることが多いです。何にしても図はよく書かれたもので、特徴がしっかりと現れています。過去問を研究する意味のある分野になります。また、昆虫については、口の形、食べ物、羽のつきかた、冬越しの様子といった細かな知識が出題されます。とても基本的なことばかりです。また、いろいろな生物についての実験観察問題の出題も頻出です。今回はイチョウの葉のつき方に関する図とグラフを読み取る観察問題で、知識は出題されません。あまり見かけないタイプの問題ですが、問題文でグラフや図の見方についての情報が問題文中に示されており、これをもとに問題を解いていくことになります。ルールを守り、細かく作業をしていくことで、正解にたどりつくことができるようになっています。開成レベルの受験生であればこのような初見の問題でも戸惑うことなく、確実に得点を取るべき問題です。
本年度の理科の問題は近年の開成入試の中でも特に高得点勝負であったといえます。
開成の物理では例年力学を中心とする情報処理力、計算力を求める良問が多く見られます。これらの問題は受験生の持っている力をきちんと得点という形で評価するための方法だと考えられます。近年いろいろな入試問題で見られる、範囲のある解答や、解答を一つに決められない出題などの意地悪さは皆無。ただ、しっかりと解ききったもの達だけに開成の門戸を開くという問題のようにも思えます。開成の物理の問題は一定のレベル以上のものは出題されません。ですから、いたずらに難易度の高い問題ばかりを演習するのでは無く、開成の求めているレベルの計算レベルの良問をしっかりと練習していくことが必要であると考えます。
開成の化学では例年水溶液、実験器具、燃焼に関する問題が出題されます。知識はもれなく細かく身に付けておく必要があります。特に実験器具の扱い方についてはいろいろな角度から出題してきます。過去問だけでは無く、実験器具の扱い方についての問題にも多く目を通しておくと良いでしょう。知識問題の次に落とせない問題は計算問題です。価額の計算問題には比例関係の計算しか見られないのですが、それでも気体発生の問題などでは、途中計算に分数が出てしまうが、最終的に整数になるようなものも見られます。ここの学校では指示の無い限り分数解答はありません。ですから、このことから、もし自分の解答が分数になったときは間違っていると断定できることがわかります。また、溶解度の計算もよく出題されます。水の量を変えたり温度を変えたりと情報をどんどん変えられても解答できるように練習しておきましょう。
開成の地学ではここ数年で話題になった時事問題の出題が多くなりました。ニュースや新聞を細かくチェックする必要はありませんが、身のまわりで起きている現象に関しては興味を持つようにしていきましょう。また、図を観察する出題、作図を必要とする出題、グラフを選ばせる出題などが多く見られるのも特徴です。ただ、それ以外は標準的な問題がほとんどですので、知識、図、グラフを確実に、それをもとにして次のレベルのことを考えられるようにしていくと効果的な対策となるでしょう。得点を失いやすい単元の一つがこの地学ともいえるでしょう。いかにこの分野で失点しないかが合格への分かれ道であると考えます。
開成の生物では昆虫、花に関する出題がほとんどです。昆虫は仲間分け、棲み分け、エサの違い、冬越しの違い、幼虫の形などを整理し、花、実などは図を見ながらその科ごとに見られる特徴、その花しか持たない特徴などのようにやはりまとめながらの学習が効果的でしょう。教科書で見たことのあるものはすべて開成では出題範囲になります。それだけで足りないものについては、関連づけながら図鑑なども見ておくとよいでしょう。また生物を題材にした実験(開花のようすを調べる・光を当てた発芽など)も多く出題されています。そのほとんどが見たことの無いものが多く、これらの問題が得点差になります。地学と並び、開成中の合否を分けるのはこの生物分野でもあります。
開成を受験する生徒さんのほとんどが、物理、化学の分野は満点でしょう。とすると唯一差をつけられてしまう、差をつけることができる分野は地学と生物となります。ですから、物理、化学に弱点を持っている受験生はまずはこれらを完璧にすることからはじめないと開成受験のためのステージにもあがれません。またそれらを仕上げたのであれば生物、地学を隙無く仕上げていきましょう。