梅雨の季節を迎えました。もう、夏休みも目前ですね。受験生にとっては、「天王山」とも言われる夏休み。この時期をいかに有意義に過ごせるか、で来年の入試の半分は決まるといっても過言ではありません。今のうちから夏休みの計画をしっかり立てておくことをお勧めします。
さて、ここ何回かは記述の取り組みについて書いてきましたが、今回は「出題者の意図」について考えてみたいと思います。
皆さんが受験する入試問題はもちろん、様々な塾が行う各種テストでも問題集にのっている問題でも、必ず「出題者」が存在します。特に長文読解問題では、本文の「作者」とは別に「出題者」が存在する、ということを受験生の皆さんには忘れないでいてほしいと思います。
「 線部で作者が伝えたいことを、わかりやすく説明しなさい。」
「 線部で作者が伝えたいこととして最もふさわしいものを次の中から選びなさい」
よく出題される設問ですね。受験勉強をしている皆さんなら、今までにこのような問題を何回も解いてきたことでしょう。
ここで大切なことは何か?
「作者が伝えたいこと」と言っていますが、その問題を作ったのは「作者」ではなく「出題者」である、ということです。つまり、出題者が何を答えさせたいのか?を理解せずに答えてもいい答案はできないのです。
ここで、出題者側にいる私が問題を作成する際の考え方をいくつか紹介します。
たとえば、記号選択問題を作るとします。当然、正解(○)をまず作りますが、同時に明らかな不正解(×)も作ります。四択であれば残り二つですが、これは
①間違っているとは言い切れないが、本文中に明確な手掛かりがない(△)
②本文中にその言葉はあるが、ここで聞いていることとはつながらない(×)
といった、いわば「ひっかけ用」の選択肢を用意します。入試問題や模擬試験の問題は、学校のテストとは違い「差をつけるため」に作成するので、このような作り方になります。よく、「消去法で間違っているのを消せばいい」と参考書に書かれていたり、受験生の皆さんも言っていたりしますが、上記の①などは、1回読んだだけでは簡単には消せません。さらに、一つ一つの選択肢が長いような場合はなおさらです。そのような場合は、長い選択肢をいくつかの部分に分割して、それぞれを本文と照らし合わせて「○」「△」「×」に区分します。その上で、「×」が一つでも付いたものはすぐに消す。残ったもののうち、「○」の最も多いものを解答する、という手順を踏むと正解率がグンと上がるはずです。なぜなら、出題者の作成手順を追った解き方になるからです。
次に、記述問題の場合ですが、こちらも一つ例を挙げてみます。
「登場人物Aはどのような性格で描かれていますか。わかりやすく説明しなさい。」
2017年の開成中でも出題されているパターンですね。皆さんなら、どのような考え方をしますか?
文学的文章で、登場人物の性格を知る手がかりは、当然「行動」「言動」などです。どのような場面で、どのようなことをして(言って)いるか?を読み取れれば、大まかな性格はつかめます。ただ、ここでもう一歩踏み込んで「人の性格には長所も短所もあるものだ」と考えるべきです。神様や仏様ではなく普通の人間の性格である以上、いいところも悪いところもあって当然、と考えます。
その上で、今度はどういう順に書くか、を考えます。といっても、次の二通りしかないですね。
長所 → 短所
短所 → 長所
どちらで書けばいいか…勘のいい人はピンとくることでしょう。「いいところもあるが、悪い性格」と書くよりも、「欠点もあるが、いい性格」と書いた方が印象がいいですね。私がこうした問題を作れば、間違いなく後者の書き方で模範解答を作ります。
受験生の皆さんは、夏を挟んで模試を受けたり過去問を解いたりする機会も増えていくと思います。その際、今回紹介した「出題者の意図」を頭の片隅に意識して解くようにしてほしいと思います。