以前、NHKの科学番組でミツバチの生態を紹介していました。番組の内容そのものがおもしろいですし、とても勉強になりますから、少しでも興味が引かれる内容のときはぜひ観て欲しいと思います。さて、番組で紹介していたのはニホンミツバチについてのお話でした。このミツバチは1つの巣に1万匹もいて、とても大きな組織をつくり共同で生活をしているそうです。そして、そのほとんどが働きバチで、羽化をしてから1ヶ月ほどで寿命が尽きてしまいますが、その間に分担する仕事がどんどん変わっていくそうです。まるで人間で言うところの「転職」をどんどん繰り返していく、ということですね。どのように「転職」をしていくかというと、まず羽化したら「掃除係」をします。空き部屋を再利用するためで、ぬけがらやフンなどを処分して新しく卵を産めるようにするためです。そして3日目には幼虫がいる部屋で「育児係」を始めます。働きバチが体内でつくる特別なミルクはとても栄養が多いそうで、幼虫がどんどん成長していくそうです。続いて7日目には「建築係」をし、10日目には仲間が集めてきた花のみつを受け取り、保存ができるように酵素を混ぜてハチミツにしてたくわえる「貯蜜係」をします。そうして羽化をしてから20日が経つと、いよいよ巣の外へと出ていき、花のみつを集める仕事をします。このように次から次へと仕事を変えていき、1ヶ月という生涯を終えていくのが働きバチの一生になります。
では、なぜそれぞれに役割分担をして、専門の仕事をそれぞれが行うのではなく、様々な仕事に「転職」していくのでしょうか?
その答えのヒントは、巣の外にはミツバチを捕食する鳥や肉食の昆虫などの敵がいるということです。どうですか、答えは思い浮かびましたか?
では考えてみましょう。もしも、それぞれの仕事を専門に行うハチが決まっていたとします。巣の中で仕事をしている働きバチは基本的に敵に襲われることはありません。しかし、花のみつを集めに巣の外へ出ていく働きバチは敵に食べられる危険がとても多いですね。つまりそれぞれが専門の仕事をしていると、みつを集める働きバチだけが敵に食べられてしまい、どんどん数が減っていくことになります。そうすると、いずれは巣にいる仲間たちもエサが不足してしまい、みんなが飢えてしまいます。それを防ぐしくみが「転職」ということになります。一生の最後の10日間は危険な外で仕事をし、敵に襲われて数が減ったとしても次から次へと「転職」をしてきて花のみつを集める働きバチの数は減らないようしているのです。
このように「なぜ」「どうして」という問いに対していろいろと考える力を育てることはとても大切です。特に麻布中や渋谷幕張中のように思考力を問う問題を多く出す学校を受験する人には特に必要な力です。テレビを観ているときも、番組で紹介される前に自分で先にいろいろと「理由」や「しくみ」を考える習慣を持つとよい練習になりますよ。やってみてはどうでしょうか。