シベリアの永久凍土から氷づけになっている動物の死骸が次々と発見されていることはよく知られています。マンモスの話などは特に有名なので、皆さんも話を聞いたことがあるのではないでしょうか。何万年も前の生物の体が、骨だけではなく、内蔵や皮膚などもあわせて残っていたりして、いろいろな発見がたくさんありますが、今回はこられの大型の生物に注目するのではなく、とても小さい生物にも目を向けてみましょう。
今年の6月の初めごろ、ロシアの研究チームからある生物の蘇生に関する論文が発表されました。その内容は、シベリアの永久凍土に2万4000年の間、ずっと閉じ込められていた「ヒルガタワムシ」という微生物が見事に蘇生し、しかも増殖させることに成功した、というものです。もし皆さんが高学年であれば、理科のプランクトンの授業で「ワムシ」を学習しているので、この「ヒルガタワムシ」が多細胞生物であることがわかると思います。つまり今回の研究の結果から、臓器のような多細胞組織を凍らせて長期間保存することが将来できるようになるかもしれない、ということです。このことがどれだけ大きな可能性を秘めているか、皆さんならわかるでしょう。
もう1つ別のニュースを紹介しましょう。数年前ですがシベリアの永久凍土から約3万年前に閉じ込められたウイルスが発見され、そのウイルスの蘇生に成功した、と発表がありました。その蘇生したウイルスは、研究室でアメーバに感染することが確認されました。つまり3万年もの間、氷の中でそのウイルスは生きていた、と言うことができるわけです。その生命力は驚くべきものですが、そうするともしかして他にも未知のウイルスが氷の中に閉じ込められていて、それらが蘇生することがあるのかも、と考えてしまいますね。未知のウイルスというとちょっと怖く感じるかもしれません。でも今回、蘇生に成功したウイルスは人に感染する力が無いそうです。数万年前という人がまだいなかったときのウイルスは、人に感染する力は持っていないだろうと、多くの科学者が考えています。ですからおそらく何も心配することは無いでしょう。つまりきちんと研究をして、正しく「知識」を得ることで、本当に恐れるべきものと、恐れる必要が無いものがきちんと区別することができるわけです。
こうして生物に関するニュースを少し見てみるだけでも生物とはなんと不思議なものなのか、と思い知らされます。そして「生物の不思議」に興味を持ち、それらを研究することで人類は新しい可能性を手に入れることができ、また「知識」という武器を手に入れて、さまざまな困難を切り開いていくことができるわけです。
もし皆さんの中に「生物の不思議」について興味を持っている人がいたら、何かしらの研究に取り組んでみてはどうでしょうか。皆さんが目指す筑波大附属駒場中を始め、男子御三家、女子御三家と呼ばれる学校には、どの学校にも生物部があります。生物部に所属して、自分の興味がある生物を研究してみるのもいいのではないでしょうか。そして、おそらく多くの先輩たちは、生物部で昆虫や水棲動物など大きな生き物を研究していると思います。そこで皆さんは、生物部に入りあえて微生物について研究してみるのはどうでしょう。おもしろいと思いませんか?