2015年度入試の駒場東邦中の問題を解いていた時のこと。大問3にダンゴムシの出題がありました。
ダンゴムシは節足動物の甲殻類で「エビ・カニに近い仲間である」というのは理科の教材にも通常出ている内容であり、ご存じの生徒たちも多いと思います。そして節足動物だからこそダンゴムシは脱皮によって成長するであろう事も予想することは易しかったと思います。(小問2と3の出題でした。)
(5)ダンゴムシは住宅地などではよくコンクリートの上にいることがありますが、どのような理由でしょうか。最も適当だと考えられる理由を次のア~ウから1つ選び、記号で答えなさい。
ア、コンクリートをかじって石灰分(カルシウム)を
補給している。
イ、白いところで目立つため、仲間をみつけやすい。
ウ、あたたかいコンクリートから熱をもらっている。
(6)ダンゴムシの子育てについて述べた次のア~エの文のうち、正しいものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア、卵は木に産み付けられ、卵からかえると
子供(幼虫)はすぐに自分で餌をとる。
イ、卵は地面に産み付けられ、卵からかえると
子供(幼虫)はすぐに自分で餌をとる。
ウ、メスは地面に巣を作って卵をかえし、
子供(幼虫)に餌を与えて育てる。
エ、メスは卵をおなかの袋の中でかえし、
子供(幼虫)をしばらくの間保護している。
ダンゴムシといえば「同じ方向に2度曲がらない習性」があるため、迷路を歩かせる実験からその習性をみつけだす出題であるとか、森の落ち葉を食べて微生物に分解させやすくする「分解者」としての性質について聞いてくる出題は有名ですが、上記小問5と6の様な理由や性質を私は知りませんでした。よって私は次のように予想しました(間違いでしたが)。
(5)ウ:ダンゴムシは変温動物であり、植物のロゼット葉やスプリングエフェメラル(早春に地面近くで花を咲かせる植物)の様な地熱の利用をすることがあるのではないか。
(6)イ:ダンゴムシが子を育てるのは考えにくく、ダンゴムシが住んでいる所は落ち葉や石の裏なので、卵を産むなら地面だろう。
ただし、自信が無かったため、調べたところ、(5)はアが正解。(6)はエが正解だと分かりました。
ダンゴムシは体内の情報伝達や外骨格形成のためにカルシウムが不足しやすい動物だそうです。よって脱皮したカラも食べる様ですね。そしてダンゴムシがお腹で卵を守り、子供の状態で産まれてくる事に関しては「なぜカニの仲間であることを思い出せなかったのか」と反省しました。
教師でも知らないことはたくさんあります。入試問題から学ぶこともたくさんあります。テキストで生物の知識を一生懸命覚える事もよいでしょうが、名前だけ覚えたものはすぐに忘れますし、「印象に残らない名称が何回読んでも覚えられない経験」は生徒さんたちにも覚えがあるのでは無いでしょうか。
だからこそ「知識は問題から学ぶ」を併用すれば良いのです。「知らないこと」「知らない知識」が出てきた時に調べて「へ~!」と納得する。それこそが生きた知識の身につけ方なのではないか、楽しく勉強するコツなのではないかと思います。
ところで「ダンゴムシ」をインターネットで検索してみると、NHKの「ダーウィンが来た!」という番組がヒットしました。2012年10月に放送されたダンゴムシの回は駒場東邦中のダンゴムシの出題とかなり近い内容だった様です。受験学年の生徒さんにはおススメできませんが、時間があるときにこの番組を少しずつ見ておくとかなり勉強になるのかもしれませんね。入試問題作成をされている難関中学校の先生方もきっと「出題ネタ」を探していらっしゃると思いますので。